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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)

[場所] ニューヨーク
[年月日] 1992年5月9日作成,1994年3月21日効力発生,1992年6月13日署名,1993年5月14日国会承認
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成6年,11−51頁.
[備考] 
[全文]

気候変動に関する国際連合枠組条約

平成四年五月九日 ニュー・ヨークで作成
平成六年三月二十一日 効力発生
平成四年六月十三日 署名
平成五年五月十四日 国会承認
平成五年五月二十八日 受諾の閣議決定
平成五年五月二十八日 受諾書寄託
平成六年六月二十一日 公布及び告示(条約第六号及び外務省告示第三五〇号)
平成六年三月二十一日 我が国について効力発生

この条約の締約国は、

地球の気候の変動及びその悪影響が人類の共通の関心事であることを確認し、

人間活動が大気中の温室効果ガスの濃度を著しく増加させてきていること、その増加が自然の温室効果を増大させていること並びにこのことが、地表及び地球の大気を全体として追加的に温暖化することとなり、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすおそれがあることを憂慮し、

過去及び現在における世界全体の温室効果ガスの排出量の最大の部分を占めるのは先進国において排出されたものであること、開発途上国における一人当たりの排出量は依然として比較的少ないこと並びに世界全体の排出量において開発途上国における排出量が占める割合はこれらの国の社会的な及び開発のためのニーズに応じて増加していくことに留意し、

温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫の陸上及び海洋の生態系における役割及び重要性を認識し、

気候変動の予測には、特に、その時期、規模及び地域的な特性に関して多くの不確実性があることに留意し、

気候変動が地球的規模の性格を有することから、すべての国が、それぞれ共通に有しているが差異のある責任、各国の能力並びに各国の社会的及び経済的状況に応じ、できる限り広範な協力を行うこと及び効果的かつ適当な国際的対応に参加することが必要であることを確認し、

千九百七十二年六月十六日にストックホルムで採択された国際連合人間環境会議の宣言の関連規定を想起し、

諸国は、国際連合憲章及び国際法の諸原則に基づき、その資源を自国の環境政策及び開発政策に従って関発する主権的権利を有すること並びに自国の管轄又は管理の下における活動が他国の環境又はいずれの国の管轄にも属さない区域の環境を害さないことを確保する責任を有することを想起し、

気候変動に対処するための国際協力における国家の主権の原則を再確認し、

諸国が環境に関する効果的な法令を制定すべきであること、環境基準、環境の管理に当たっての目標及び環境問題における優先度はこれらが適用される環境及び開発の状況を反映すべきであること、並びにある国の適用する基準が他の国(特に開発途上国)にとって不適当なものとなり、不当な経済的及び社会的損失をもたらすものとなるおそれがあることを認め、

国際連合環境開発会議に関する千九百八十九年十二月二十二日の国際連合総会決議第二百二十八号(第四十四回会期)並びに人類の現在及び将来の世代のための地球的規模の気候の保護に関する千九百八十八年十二月六日の国際連合総会決議第五十三号(第四十三回会期)、千九百八十九年十二月二十二日の同決議第二百七号(第四十四回会期)、千九百九十年十二月二十一日の同決議第二百十二号(第四十五回会期)及び千九百九十一年十二月十九日の同決議第百六十九号(第四十六回会期)を想起し、

海面の上昇が島及び沿岸地域(特に低地の沿岸地域)に及ぼし得る悪影響に関する千九百八十九年十二月二十二日の国際連合総会決議第二百六号(第四十四回会期)の規定及び砂漠化に対処するための行動計画の実施に関する千九百八十九年十二月十九日の国際連合総会決議第百七十二号(第四十四回会期)の関連規定を想起し、

更に、千九百八十五年のオゾン層の保護のためのウイーン条約並びに千九百九十年六月二十九日に調整され及び改正された千九百八十七年のオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)を想起し、

千九百九十年十一月七日に採択された第二回世界気候会議の閣僚宣言に留意し、

多くの国が気候変動に関して有益な分析を行っていること並びに国際連合の諸機関(特に、世界気象機関、国際連合環境計画)その他の国際機関及び政府間機関が科学的研究の成果の交換及び研究の調整について重要な貢献を行っていることを意識し、

気候変動を理解し及びこれに対処するために必要な措置は、関連する科学、技術及び経済の分野における考察に基礎を置き、かつ、これらの分野において新たに得られた知見に照らして絶えず再評価される場合には、環境上、社会上及び経済上最も効果的なものになることを認め、

気候変動に対処するための種々の措置は、それ自体経済的に正当化し得ること及びその他の環境問題の解決に役立ち得ることを認め、

先進国が、明確な優先順位に基づき、すべての温室効果ガスを考慮に入れ、かつ、それらのガスがそれぞれ温室効果の増大に対して与える相対的な影響を十分に勘案した包括的な対応戦略(地球的、国家的及び合意がある場合には地域的な規模のもの)に向けた第一歩として、直ちに柔軟に行動することが必要であることを認め、

更に、標高の低い島嶼国{嶼にしょとルビ}その他の島嶼国{嶼にしょとルビ}、低地の沿岸地域、乾燥地域若しくは半乾燥地域又は洪水、干ばつ若しくは砂漠化のおそれのある地域を有する国及びぜい弱な山岳の生態系を有する開発途上国は、特に気候変動の悪影響を受けやすいことを認め、

経済が化石燃料の生産、使用及び輸出に特に依存している国(特に開発途上国)について、温室効果ガスの排出抑制に関してとられる措置の結果特別な困難が生ずることを認め、

持続的な経済成長の達成及び貧困の撲滅という開発途上国の正当かつ優先的な要請を十分に考慮し、気候変動への対応については、社会及び経済の開発に対する悪影響を回避するため、これらの開発との間で総合的な調整が図られるべきであることを確認し、

すべての国(特に開発途上国)が社会及び経済の持続可能な開発の達成のための資源の取得の機会を必要としていること、並びに開発途上国がそのような開発の達成という目標に向かって前進するため、一層高いエネルギー効率の達成及び温室効果ガスの排出の一般的な抑制の可能性(特に、新たな技術が経済的にも社会的にも有利な条件で利用されることによるそのような可能性)をも考慮に入れつつ、そのエネルギー消費を増加させる必要があることを認め、

現在及び将来の世代のために気候系を保護することを決意して、

次のとおり協定した。

第一条 定義(注)

注 各条の表題は、専ら便宜のために付するものである。

この条約の適用上、

「気候変動の悪影響」とは、気候変動に起因する自然環境又は生物相の変化であって、自然の及び管理された生態系の構成、回復力若しくは生産力、社会及び経済の機能又は人の健康及び福祉に対し著しく有害な影響を及ぼすものをいう。

「気候変動」とは、地球の大気の組成を変化させる人間活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるものをいう。

「気候系」とは、気圏、水圏、生物圏及び岩石圏の全体並びにこれらの間の相互作用をいう。

「排出」とは、特定の地域及び期間における温室効果ガス又はその前駆物質の大気中への放出をいう。

「温室効果ガス」とは、大気を構成する気体(天然のものであるか人為的に排出されるものであるかを問わない。)であって、赤外線を吸収し及び再放射するものをいう。

「地域的な経済統合のための機関」とは、特定の地域の主権国家によって構成され、この条約又はその議定書が規律する事項に関して権限を有し、かつ、その内部手続に従ってこの条約若しくはその議定書の署名、批准、受諾若しくは承認又はこの条約若しくはその議定書への加入が正当に委任されている機関をいう。

「貯蔵庫」とは、温室効果ガス又はその前駆物質を貯蔵する気候系の構成要素をいう。

「吸収源」とは、温室効果ガス、エーロゾル又は温室効果ガスの前駆物質を大気中から除去する作用、活動又は仕組みをいう。

「発生源」とは、温室効果ガス、エーロゾル又は温室効果ガスの前駆物質を大気中に放出する作用又は活動をいう。

第二条 目的

この条約及び締約国会議が採択する関連する法的文書は、この条約の関連規定に従い、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする。そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきである。

第三条 原則

締約国は、この条約の目的を達成し及びこの条約を実施するための措置をとるに当たり、特に、次に掲げるところを指針とする。

締約国は、衡平の原則に基づき、かつ、それぞれ共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に従い、人類の現在及び将来の世代のために気候系を保護すべきである。したがって、先進締約国は、率先して気候変動及びその悪影響に対処すべきである。

開発途上締約国(特に気候変動の悪影響を著しく受けやすいもの)及びこの条約によって過重又は異常な負担を負うこととなる締約国(特に開発途上締約国)の個別のニーズ及び特別な事情について十分な考慮が払われるべきである。

締約国は、気候変動の原因を予測し、防止し又は最小限にするための予防措置をとるとともに、気候変動の悪影響を緩和すべきである。深刻な又は回復不可能な損害のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、このような予防措置をとることを延期する理由とすべきではない。もっとも、気候変動に対処するための政策及び措置は、可能な限り最小の費用によって地球的規模で利益がもたらされるように費用対効果の大きいものとすることについても考慮を払うべきである。このため、これらの政策及び措置は、社会経済状況の相違が考慮され、包括的なものであり、関連するすべての温室効果ガスの発生源、吸収源及び貯蔵庫並びに適応のための措置を網羅し、かつ、経済のすべての部門を含むべきである。気候変動に対処するための努力は、関心を有する締約国の協力によっても行われ得る。

締約国は、持続可能な開発を促進する権利及び責務を有する。気候変動に対処するための措置をとるためには経済開発が不可欠であることを考慮し、人に起因する変化から気候系を保護するための政策及び措置については、各締約国の個別の事情に適合したものとし、各国の開発計画に組み入れるべきである。

締約国は、すべての締約国(特に開発途上締約国)において持続可能な経済成長及び開発をもたらし、もって締約国が一層気候変動の問題に対処することを可能にするような協力的かつ開放的な国際経済体制の確立に向けて協力すべきである。気候変動に対処するためにとられる措置(一方的なものを含む。)は、国際貿易における恣意的{恣にしとルビ}若しくは不当な差別の手段又は偽装した制限となるべきではない。

第四条 約束

すべての締約国は、それぞれ共通に有しているが差異のある責任、各国及び地域に特有の開発の優先順位並びに各国特有の目的及び事情を考慮して、次のことを行う。

(a) 締約国会議が合意する比較可能な方法を用い、温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)について、発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する自国の目録を作成し、定期的に更新し、公表し及び第十二条の規定に従って締約国会議に提供すること。

(b) 自国の(適当な場合には地域の)計画を作成し、実施し、公表し及び定期的に更新すること。この計画には、気候変動を緩和するための措置(温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の発生源による人為的な排出及び吸収源による除去を対象とするもの)及び気候変動に対する適応を容易にするための措置を含めるものとする。

(c) エネルギー、運輸、工業、農業、林業、廃棄物の処理その他すべての関連部門において、温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出を抑制し、削減し又は防止する技術、慣行及び方法の開発、利用及び普及(移転を含む。)を促進し、並びにこれらについて協力すること。

(d) 温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の吸収源及び貯蔵庫(特に、バイオマス、森林、海その他陸上、沿岸及び海洋の生態系)の持続可能な管理を促進すること並びにこのような吸収源及び貯蔵庫の保全(適当な場合には強化)を促進し並びにこれらについて協力すること。

(e) 気候変動の影響に対する適応のための準備について協力すること。沿岸地域の管理、水資源及び農業について、並びに干ばつ及び砂漠化により影響を受けた地域(特にアフリカにおける地域)並びに洪水により影響を受けた地域の保護及び回復について、適当かつ総合的な計画を作成すること。

(f) 気候変動に関し、関連する社会、経済及び環境に関する自国の政策及び措置において可能な範囲内で考慮を払うこと。気候変動を緩和し又はこれに適応するために自国が実施する事業又は措置の経済、公衆衛生及び環境に対する悪影響を最小限にするため、自国が案出し及び決定する適当な方法(例えば影響評価)を用いること。

(g) 気候変動の原因、影響、規模及び時期並びに種々の対応戦略の経済的及び社会的影響についての理解を増進し並びにこれらについて残存する不確実性を減少させ又は除去することを目的として行われる気候系に関する科学的、技術的、社会経済的研究その他の研究、組織的観測及び資料の保管制度の整備を促進し、並びにこれらについて協力すること。

(h) 気候系及び気候変動並びに種々の対応戦略の経済的及び社会的影響に関する科学上、技術上、社会経済上及び法律上の情報について、十分な、開かれた及び迅速な交換を促進し、並びにこれらについて協力すること。

(i) 気候変動に関する教育、訓練及び啓発を促進し、これらについて協力し、並びにこれらへの広範な参加(民間団体の参加を含む。)を奨励すること。

(j) 第十二条の規定に従い、実施に関する情報を締約国会議に送付すること。

附属書Iに掲げる先進締約国その他の締約国(以下「附属書Iの締約国」という。)は、特に、次に定めるところに従って約束する。

(a) 附属書Iの締約国は、温室効果ガスの人為的な排出を抑制すること並びに温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫を保護し及び強化することによって気候変動を緩和するための自国の政策を採用し、これに沿った措置をとる(注)。これらの政策及び措置は、温室効果ガスの人為的な排出の長期的な傾向をこの条約の目的に沿って修正することについて、先進国が率先してこれを行っていることを示すこととなる。二酸化炭素その他の温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の量を千九百九十年代の終わりまでに従前の水準に戻すことは、このような修正に寄与するものであることが認識される。また、附属書Iの締約国の出発点、対処の方法、経済構造及び資源的基盤がそれぞれ異なるものであること、強力かつ持続可能な経済成長を維持する必要があること、利用可能な技術その他の個別の事情があること、並びにこれらの締約国がこの条約の自的のための世界的な努力に対して衡平かつ適当な貢献を行う必要があることについて、考慮が払われる。附属書Iの締約国が、これらの政策及び措置を他の締約国と共同して実施すること並びに他の締約国によるこの条約の目的、特に、この(a)の規定の目的の達成への貢献について当該他の締約国を支援することもあり得る。

注 これらの政策及び措置には、地域的な経済統合のための機関がとるものが含まれる。

(b) (a)の規定の目的の達成を促進するため、附属書Iの締約国は、(a)に規定する政策及び措置並びにこれらの政策及び措置をとった結果(a)に規定する期間について予測される二酸化炭素その他の温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する詳細な情報を、この条約が自国について効力を生じた後六箇月以内に及びその後は定期的に、第十二条の規定に従って送付する。その送付は、二酸化炭素その他の温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の量を個別に又は共同して千九百九十年の水準に戻すという目的をもって行われる。締約国会議は、第七条の規定に従い、第一回会合において及びその後は定期的に、当該情報について検討する。

(c) (b)の規定の適用上、温室効果ガスの発生源による排出の量及び吸収源による除去の量の算定に当たっては、入手可能な最良の科学上の知識(吸収源の実効的な能力及びそれぞれの温室効果ガスの気候変動への影響の度合に関するものを含む。)を考慮に入れるべきである。締約国会議は、この算定のための方法について、第一回会合において検討し及び合意し、その後は定期的に検討する。

(d) 締約国会議は、第一回会合において、(a)及び(b)の規定の妥当性について検討する。その検討は、気候変動及びその影響に関する入手可能な最良の科学的な情報及び評価並びに関連する技術上、社会上及び経済上の情報に照らして行う。締約国会議は、この検討に基づいて適当な措置((a)及び(b)に定める約束に関する改正案の採択を含む。)をとる。締約国会議は、また、第一回会合において、(a)に規定する共同による実施のための基準に関する決定を行う。(a)及び(b)の規定に関する二回目の検討は、千九百九十八年十二月三十一日以前に行い、その後は締約国会議が決定する一定の間隔で、この条約の目的が達成されるまで行う。

(e) 附属書Iの締約国は、次のことを行う。

(i) 適当な場合には、この条約の目的を達成するために開発された経済上及び行政上の手段を他の附属書Iの締約国と調整すること。

(ii) 温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の水準を一層高めることとなるような活動を助長する自国の政策及び慣行を特定し及び定期的に検討すること。

(f) 締約国会議は、関係する締約国の承認を得て附属書I及び附属書IIの一覧表の適当な改正について決定を行うために、千九百九十八年十二月三十一日以前に、入手可能な情報について検討する。

(g) 附属書Iの締約国以外の締約国は、批准書、受諾書、承認書若しくは加入書において又はその後いつでも、寄託者に対し、自国が(a)及び(b)の規定に拘束される意図を有する旨を通告することができる。寄託者は、他の署名国及び締約国に対してその通告を通報する。

附属書IIに掲げる先進締約国(以下「附属書IIの締約国」という。)は、開発途上締約国が第十二条1の規定に基づく義務を履行するために負担するすべての合意された費用に充てるため、新規のかつ追加的な資金を供与する。附属書IIの締約国は、また、1の規定の対象とされている措置であって、開発途上締約国と第十一条に規定する国際的組織との間で合意するものを実施するためのすべての合意された増加費用を負担するために開発途上締約国が必要とする新規のかつ追加的な資金(技術移転のためのものを含む。)を同条の規定に従って供与する。これらの約束の履行に当たっては、資金の流れの妥当性及び予測可能性が必要であること並びに先進締約国の間の適当な責任分担が重要であることについて考慮を払う。

附属書IIの締約国は、また、気候変動の悪影響を特に受けやすい開発途上締約国がそのような悪影響に適応するための費用を負担することについて、当該開発途上締約国を支援する。

附属書IIの締約国は、他の締約国(特に開発途上締約国)がこの条約を実施することができるようにするため、適当な場合には、これらの他の締約国に対する環境上適正な技術及びノウハウの移転又は取得の機会の提供について、促進し、容易にし及び資金を供与するための実施可能なすべての措置をとる。この場合において、先進締約国は、開発途上締約国の固有の能力及び技術の開発及び向上を支援する。技術の移転を容易にすることについてのこのような支援は、その他の締約国及び機関によっても行われ得る。

締約国会議は、附属書Iの締約国のうち市場経済への移行の過程にあるものによる2の規定に基づく約束の履行については、これらの締約国の気候変動に対処するための能力を高めるために、ある程度の弾力的適用(温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の量の基準として用いられる過去の水準に関するものを含む。)を認めるものとする。

開発途上締約国によるこの条約に基づく約束の効果的な履行の程度は、先進締約国によるこの条約に基づく資金及び技術移転に関する約束の効果的な履行に依存しており、経済及び社会の開発並びに貧困の撲滅が開発途上締約国にとって最優先の事項であることが十分に考慮される。

締約国は、この条に規定する約束の履行に当たり、気候変動の悪影響又は対応措置の実施による影響(特に、次の(a)から(i)までに掲げる国に対するもの)に起因する開発途上締約国の個別のニーズ及び懸念に対処するためにこの条約の下でとるべき措置(資金供与、保険及び技術移転に関するものを含む。)について十分な考慮を払う。

(a) 島嶼国{嶼にしょとルビ}

(b) 低地の沿岸地域を有する国

(c) 乾操地域、半乾操地域、森林地域又は森林の衰退のおそれのある地域を有する国

(d) 自然災害が起こりやすい地域を有する国

(e) 干ばつ又は砂漠化のおそれのある地域を有する国

(f) 都市の大気汚染が著しい地域を有する国

(g) ぜい弱な生態系(山岳の生態系を含む。)を有する地域を有する国

(h) 化石燃料及び関連するエネルギー集約的な製品の生産、加工及び輸出による収入又はこれらの消費に経済が大きく依存している国

(i) 内陸国及び通過国

更に、この8の規定に関しては、適当な場合には締約国会議が措置をとることができる。

締約国は、資金供与及び技術移転に関する措置をとるに当たり、後発開発途上国の個別のニーズ及び特別な事情について十分な考慮を払う。

10 締約国は、第十条の規定に従い、この条約に基づく約束の履行に当たり、気候変動に対応するための措置の実施による悪影響を受けやすい経済を有する締約国(特に開発途上締約国)の事情を考慮に入れる。この場合において、特に、化石燃料及び関連するエネルギー集約的な製品の生産、加工及び輸出による収入若しくはこれらの消費にその経済が大きく依存している締約国又は化石燃料の使用にその経済が大きく依存し、かつ、代替物への転換に重大な困難を有する締約国の事情を考慮に入れる。

第五条 研究及び組織的観測

締約国は、前条1(g)の規定に基づく約束の履行に当たって、次のことを行う。

(a) 研究、資料の収集及び組織的観測について企画し、実施し、評価し及び資金供与を行うことを目的とする国際的な及び政府間の計画、協力網又は機関について、努力の重複を最小限にする必要性に考慮を払いつつ、これらを支援し及び、適当な場合には、更に発展させること。

(b) 組織的観測並びに科学的及び技術的研究に関する各国(特に開発途上国)の能力を強化するための並びに各国が自国の管轄の外の区域において得られた資料及びその分析について利用し及び交換することを促進するための国際的な及び政府間の努力を支援すること。

(c) 開発途上国の特別の懸念及びニーズに考慮を払うこと並びに(a)及び(b)に規定する努力に参加するための開発途上国の固有の能力を改善することについて協力すること。

第六条 教育、訓練及び啓発

締約国は、第四条1(i)の規定に基づく約束の履行に当たって、次のことを行う。

(a) 国内的な(適当な場合には小地域的及び地域的な)規模で、自国の法令に従い、かつ、自国の能力の範囲内で、次のことを促進し及び円滑にすること。

(i) 気候変動及びその影響に関する教育啓発事業の計画の作成及び実施

(ii) 気候変動及びその影響に関する情報の公開

(iii) 気候変動及びその影響についての検討並びに適当な対応措置の策定への公衆の参加

(iv) 科学、技術及び管理の分野における人材の訓練

(b) 国際的に及び適当な場合には既存の団体を活用して、次のことについて協力し及びこれを促進すること。

(i) 気候変動及びその影響に関する教育及び啓発の資料の作成及び交換

(ii) 教育訓練事業の計画(特に開発途上国のためのもの。国内の教育訓練機関の強化及び教育訓練専門家を養成する者の交流又は派遣に関するものを含む。)の作成及び実施

第七条 締約国会議

この条約により締約国会議を設置する。

締約国会議は、この条約の最高機関として、この条約及び締約国会議が採択する関連する法的文書の実施状況を定期的に検討するものとし、その権限の範囲内で、この条約の効果的な実施を促進するために必要な決定を行う。このため、締約国会議は、次のことを行う。

(a) この条約の目的、この条約の実施により得られた経験並びに科学上及び技術上の知識の進展に照らして、この条約に基づく締約国の義務及びこの条約の下における制度的な措置について定期的に検討すること。

(b) 締約国の様々な事情、責任及び能力並びにこの条約に基づくそれぞれの締約国の約束を考慮して、気候変動及びその影響に対処するために締約国が採用する措置に関する情報の交換を促進し及び円滑にすること。

(c) 二以上の締約国の要請に応じ、締約国の様々な事情、責任及び能力並びにこの条約に基づくそれぞれの締約国の約束を考慮して、気候変動及びその影響に対処するために締約国が採用する措置の調整を円滑にすること。

(d) 締約国会議が合意することとなっている比較可能な方法、特に、温室効果ガスの発生源による排出及び吸収源による除去に関する目録を作成するため並びに温室効果ガスの排出の抑制及び除去の増大に関する措置の効果を評価するための方法について、この条約の目的及び規定に従い、これらの開発及び定期的な改善を促進し及び指導すること。

(e) この条約により利用が可能となるすべての情報に基づき、締約国によるこの条約の実施状況、この条約に基づいてとられる措置の全般的な影響(特に、環境、経済及び社会に及ぼす影響並びにこれらの累積的な影響)及びこの条約の目的の達成に向けての進捗状況{捗にちょくとルビ}を評価すること。

(f) この条約の実施状況に関する定期的な報告書を検討し及び採択すること並びに当該報告書の公表を確保すること。

(g) この条約の実施に必要な事項に関する勧告を行うこと。

(h) 第四条の3から5までの規定及び第十一条の規定に従って資金が供与されるよう努めること。

(i) この条約の実施に必要と認められる補助機関を設置すること。

(j) 補助機関により提出される報告書を検討し、及び補助機関を指導すること。

(k) 締約国会議及び補助機関の手続規則及び財政規則をコンセンサス方式により合意し及び採択すること。

(l) 適当な場合には、能力を有する国際機関並びに政府間及び民間の団体による役務、協力及び情報の提供を求め及び利用すること。

(m) その他この条約の目的の達成のために必要な任務及びこの条約に基づいて締約国会議に課されるすべての任務を遂行すること。

締約国会議は、第一回会合において、締約国会議及びこの条約により設置される補助機関の手続規則を採択する。この手続規則には、この条約において意思決定手続が定められていない事項に関する意思決定手続を含む。この手続規則には、特定の決定の採択に必要な特定の多数を含むことができる。

締約国会議の第一回会合は、第二十一条に規定する暫定的な事務局が招集するものとし、この条約の効力発生の日の後一年以内に開催する。その後は、締約国会議の通常会合は、締約国会議が別段の決定を行わない限り、毎年開催する。

締約国会議の特別会合は、締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請のある場合において事務局がその要請を締約国に通報した後六箇月以内に締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。

国際連合、その専門機関、国際原子力機関及びこれらの国際機関の加盟国又はオブザーバーであってこの条約の締約国でないものは、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することができる。この条約の対象とされている事項について認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは民間のもののいずれであるかを問わない。)であって、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーとして出席することを認められる。オブザーバーの出席については、締約国会議が採択する手続規則に従う。

第八条 事務局

この条約により事務局を設置する。

事務局は、次の任務を遂行する。

(a) 締約国会議の会合及びこの条約により設置される補助機関の会合を準備すること並びに必要に応じてこれらの会合に役務を提供すること。

(b) 事務局に提出される報告書を取りまとめ及び送付すること。

(c) 要請に応じ、締約国(特に開発途上締約国)がこの条約に従って情報を取りまとめ及び送付するに当たり、当該締約国に対する支援を円滑にすること。

(d) 事務局の活動に関する報告書を作成し、これを締約国会議に提出すること。

(e) 他の関係国際団体の事務局との必要な調整を行うこと。

(f) 締約国会議の全般的な指導の下に、事務局の任務の効果的な遂行のために必要な事務的な及び契約上の取決めを行うこと。

(g) その他この条約及びその議定書に定める事務局の任務並びに締約国会議が決定する任務を遂行すること。

締約国会議は、第一回会合において、常設の事務局を指定し、及びその任務の遂行のための措置をとる。

第九条 科学上及び技術上の助言に関する補助機関

この条約により科学上及び技術上の助言に関する補助機関を設置する。当該補助機関は、締約国会議及び適当な場合には他の補助機関に対し、この条約に関連する科学的及び技術的な事項に関する時宜を得た情報及び助言を提供する。当該補助機関は、すべての締約国による参加のために開放するものとし、学際的な性格を有する。当該補助機関は、関連する専門分野に関する知識を十分に有している政府の代表者により構成する。当該補助機関は、その活動のすべての側面に関して、締約国会議に対し定期的に報告を行う。

1の補助機関は、締約国会議の指導の下に及び能力を有する既存の国際団体を利用して次のことを行う。

(a) 気候変動及びその影響に関する科学上の知識の現状の評価を行うこと。

(b) この条約の実施に当たってとられる措置の影響に関する科学的な評価のための準備を行うこと。

(c) 革新的な、効率的な及び最新の技術及びノウハウを特定すること並びにこれらの技術の開発又は移転を促進する方法及び手段に関する助言を行うこと。

(d) 気候変動に関する科学的な計画、気候変動に関する研究及び開発における国際協力並びに開発途上国の固有の能力の開発を支援する方法及び手段に関する助言を行うこと。

(e) 締約国会議及びその補助機関からの科学、技術及び方法論に関する質問に回答すること。

1の補助機関の任務及び権限については、締約国会議が更に定めることができる。

第十条 実施に関する補助機関

この条約により実施に関する補助機関を設置する。当該補助機関は、この条約の効果的な実施について評価し及び検討することに関して締約国会議を補佐する。当該補助機関は、すべての締約国による参加のために開放するものとし、気候変動に関する事項の専門家である政府の代表者により構成する。当該補助機関は、その活動のすべての側面に関して、締約国会議に対し定期的に報告を行う。

1の補助機関は、締約国会議の指導の下に、次のことを行う。

(a) 気候変動に関する最新の科学的な評価に照らして、締約国によってとられた措置の影響を全体として評価するため、第十二条1の規定に従って送付される情報を検討すること。

(b) 締約国会議が第四条2(d)に規定する検討を行うことを補佐するため、第十二条2の規定に従って送付される情報を検討すること。

(c) 適当な場合には、締約国会議の行う決定の準備及び実施について締約国会議を補佐すること。

第十一条 資金供与の制度

贈与又は緩和された条件による資金供与(技術移転のためのものを含む。)のための制度についてここに定める。この制度は、締約国会議の指導の下に機能し、締約国会議に対して責任を負う。締約国会議は、この条約に関連する政策、計画の優先度及び適格性の基準について決定する。当該制度の運営は、一又は二以上の既存の国際的組織に委託する。

1の資金供与の制度については、透明な管理の仕組みの下に、すべての締約国から衡平なかつ均衡のとれた形で代表されるものとする。

締約国会議及び1の資金供与の制度の運営を委託された組織は、1及び2の規定を実施するための取決めについて合意する。この取決めには、次のことを含む。

(a) 資金供与の対象となる気候変動に対処するための事業が締約国会議の決定する政策、計画の優先度及び適格性の基準に適合していることを確保するための方法

(b) 資金供与に関する個別の決定を(a)の政策、計画の優先度及び適格性の基準に照らして再検討するための方法

(c) 1に規定する責任を果たすため、当該組織が締約国会議に対し資金供与の実施に関して定期的に報告書を提出すること。

(d) この条約の実施のために必要かつ利用可能な資金の額について、予測し及び特定し得るような方法により決定すること、並びにこの額の定期的な検討に関する要件

締約国会議は、第一回会合において、第二十一条3に定める暫定的措置を検討し及び考慮して、1から3までの規定を実施するための措置をとり、及び当該暫定的措置を維持するかしないかを決定する。締約国会議は、その後四年以内に、資金供与の制度について検討し及び適当な措置をとる。

先進締約国は、また、二国間の及び地域的その他の多数国間の経路を通じて、この条約の実施に関連する資金を供与することができるものとし、開発途上締約国は、これを利用することができる。

第十二条 実施に関する情報の送付

締約国は、第四条1の規定に従い、事務局を通じて締約国会議に対し次の情報を送付する。

(a) 温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する自国の目録。この目録は、締約国会議が合意し及び利用を促進する比較可能な方法を用いて、自国の能力の範囲内で作成する。

(b) この条約を実施するために締約国がとり又はとろうとしている措置の概要

(c) その他この条約の目的の達成に関連を有し及び通報に含めることが適当であると締約国が認める情報(可能なときは、世界全体の排出量の傾向の算定に関連する資料を含む。)

附属書Iの締約国は、送付する情報に次の事項を含める。

(a) 第四条2の(a)及び(b)の規定に基づく約束を履行するために採用した政策及び措置の詳細

(b) (a)に規定する政策及び措置が、温室効果ガスの発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関して第四条2(a)に規定する期間についてもたらす効果の具体的な見積り

更に、附属書IIの締約国は、第四条の3から5までの規定に従ってとる措置の詳細を含める。

開発途上締約国は、任意に、資金供与の対象となる事業を提案することができる。その提案には、当該事業を実施するために必要な特定の技術、資材、設備、技法及び慣行を含めるものとし、可能な場合には、すべての増加費用、温室効果ガスの排出の削減及び除去の増大並びにこれらに伴う利益について、それらの見積りを含める。

附属書Iの締約国は、この条約が自国について効力を生じた後六箇月以内に最初の情報の送付を行う。附属書Iの締約国以外の締約国は、この条約が自国について効力を生じた後又は第四条3の規定に従い資金が利用可能となった後三年以内に最初の情報の送付を行う。後発開発途上国である締約国は、最初の情報の送付については、その裁量によることができる。すべての締約国がその後行う送付の頻度は、この5に定める送付の期限の差異を考慮して、締約国会議が決定する。

事務局は、この条の規定に従って締約国が送付した情報をできる限り速やかに締約国会議及び関係する補助機関に伝達する。締約国会議は、必要な場合には、情報の送付に関する手続について更に検討することができる。

開発途上締約国が、この条の規定に従って情報を取りまとめ及び送付するに当たり並びに第四条の規定に基づいて提案する事業及び対応措置に必要な技術及び資金を特定するに当たり、締約国会議は、第一回会合の時から、開発途上締約国に対しその要請に応じ技術上及び財政上の支援が行われるよう措置をとる。このような支援は、適当な場合には、他の締約国、能力を有する国際機関及び事務局によって行われる。

この条の規定に基づく義務を履行するための情報の送付は、締約国会議が採択した指針に従うこと及び締約国会議に事前に通報することを条件として、二以上の締約国が共同して行うことができる。この場合において、送付する情報には、当該二以上の締約国のこの条約に基づくそれぞれの義務の履行に関する情報を含めるものとする。

事務局が受領した情報であって、締約国会議が定める基準に従い締約国が秘密のものとして指定したものは、情報の送付及び検討に関係する機関に提供されるまでの間、当該情報の秘密性を保護するため、事務局が一括して保管する。

10 9の規定に従うことを条件として、かつ、締約国が自国の送付した情報の内容をいつでも公表することができることを妨げることなく、事務局は、この条の規定に従って送付される締約国の情報について、締約国会議に提出する時に、その内容を公に利用可能なものとする。

第十三条 実施に関する問題の解決

締約国会議は、第一回会合において、この条約の実施に関する問題の解決のための多数国間の協議手続(締約国がその要請により利用することができるもの)を定めることを検討する。

第十四条 紛争の解決

この条約の解釈又は適用に関して締約国間で紛争が生じた場合には、紛争当事国は、交渉又は当該紛争当事国が選択するその他の平和的手段により紛争の解決に努める。

地域的な経済統合のための機関でない締約国は、この条約の解釈又は適用に関する紛争について、同一の義務を受諾する締約国との関係において次の一方又は双方の手段を当然にかつ特別の合意なしに義務的であると認めることをこの条約の批准、受諾若しくは承認若しくはこれへの加入の際に又はその後いつでも、寄託者に対し書面により宣言することができる。

(a) 国際司法裁判所への紛争の付託

(b) 締約国会議ができる限り速やかに採択する仲裁に関する附属書に定める手続による仲裁

地域的な経済統合のための機関である締約国は、(b)に規定する手続による仲裁に関して同様の効果を有する宣言を行うことができる。

2の規定に基づいて行われる宣言は、当該宣言の期間が満了するまで又は書面による当該宣言の撤回の通告が寄託者に寄託された後三箇月が経過するまでの間、効力を有する。

新たな宣言、宣言の撤回の通告又は宣言の期間の満了は、紛争当事国が別段の合意をしない限り、国際司法裁判所又は仲裁裁判所において進行中の手続に何ら影響を及ぼすものではない。

2の規定が適用される場合を除くほか、いずれかの紛争当事国が他の紛争当事国に対して紛争が存在する旨の通告を行った後十二箇月以内にこれらの紛争当事国が1に定める手段によって当該紛争を解決することができなかった場合には、当該紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により調停に付される。

いずれかの紛争当事国の要請があったときは、調停委員会が設置される。調停委員会は、各紛争当事国が指名する同数の委員及び指名された委員が共同で選任する委員長によって構成される。調停委員会は、勧告的な裁定を行い、紛争当事国は、その裁定を誠実に検討する。

1から6までに定めるもののほか、調停に関する手続は、締約国会議ができる限り速やかに採択する調停に関する附属書に定める。

この条の規定は、締約国会議が採択する関連する法的文書に別段の定めがある場合を除くほか、当該法的文書について準用する。

第十五条 この条約の改正

締約国は、この条約の改正を提案することができる。

この条約の改正は、締約国会議の通常会合において採択する。この条約の改正案は、その採択が提案される会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に通報する。事務局は、また、改正案をこの条約の署名国及び参考のために寄託者に通報する。

締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、当該会合に出席しかつ投票する締約国の四分の三以上の多数による議決で採択する。採択された改正は、事務局が寄託者に通報するものとし、寄託者がすべての締約国に対し受諾のために送付する。

改正の受諾書は、寄託者に寄託する。3の規定に従って採択された改正は、この条約の締約国の少なくとも四分の三の受諾書を寄託者が受領した日の後九十日目の日に、当該改正を受諾した締約国について効力を生ずる。

改正は、他の締約国が当該改正の受諾書を寄託者に寄託した日の後九十日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。

この条の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。

第十六条 この条約の附属書の採択及び改正

この条約の附属書は、この条約の不可分の一部を成すものとし、「この条約」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。附属書は、表、書式その他科学的、技術的、手続的又は事務的な性格を有する説明的な文書に限定される(ただし、第十四条の2(b)及び7の規定については、この限りでない。)。

この条約の附属書は、前条の2から4までに定める手続を準用して提案され及び採択される。

2の規定に従って採択された附属書は、寄託者がその採択を締約国に通報した日の後六箇月で、その期間内に当該附属書を受諾しない旨を寄託者に対して書面により通告した締約国を除くほか、この条約のすべての締約国について効力を生ずる。当該附属書は、当該通告を徹底する旨の通告を寄託者が受領した日の後九十日目の日に、当該通告を撤回した締約国について効力を生ずる。

この条約の附属書の改正の提案、採択及び効力発生は、2及び3の規定によるこの条約の附属書の提案、採択及び効力発生と同一の手続に従う。

附属書の採択又は改正がこの条約の改正を伴うものである場合には、採択され又は改正された附属書は、この条約の改正が効力を生ずる時まで効力を生じない。

第十七条 議定書

締約国会議は、その通常会合において、この条約の議定書を採択することができる。

議定書案は、1の通常会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に通報する。

議定書の効力発生の要件は、当該議定書に定める。

この条約の締約国のみが、議定書の締約国となることができる。

議定書に基づく決定は、当該議定書の締約国のみが行う。

第十八条 投票権

この条約の各締約国は、2に規定する場合を除くほか、一の票を有する。

地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲内の事項について、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票を投ずる権利を行使する。当該機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。

第十九条 寄託者

国際連合事務総長は、この条約及び第十七条の規定に従って採択される議定書の寄託者とする。

第二十条 署名

この条約は、国際連合環境開発会議の開催期間中はリオ・デ・ジャネイロにおいて、千九百九十二年六月二十日から千九百九十三年六月十九日まではニュー・ヨークにある国際連合本部において、国際連合又はその専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及び地域的な経済統合のための機関による署名のために開放しておく。

第二十一条 暫定的措置

第八条に規定する事務局の任務は、締約国会議の第一回会合が終了するまでの間、国際連合総会が千九百九十年十二月二十一日の決議第二百十二号(第四十五回会期)によって設置した事務局が暫定的に遂行する。

1に規定する暫定的な事務局の長は、気候変動に関する政府間パネルと緊密に協力し、同パネルによる客観的な科学上及び技術上の助言が必要とされる場合に、同パネルが対応することができることを確保する。科学に関するその他の関連団体も、協議を受ける。

国際連合開発計画、国際連合環境計画及び国際復興開発銀行の地球環境基金は、第十一条に規定する資金供与の制度の運営について暫定的に委託される国際的組織となる。この点に関し、同基金が同条の要件を満たすことができるようにするため、同基金は、適切に再編成されるべきであり、その参加国の構成は、普遍的なものとされるべきである。

第二十二条 批准、受諾、承認又は加入

この条約は、国家及び地域的な経済統合のための機関により批准され、受諾され、承認され又は加入されなければならない。この条約は、この条約の署名のための期間の終了の日の後は、加入のために開放しておく。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

この条約の締約国となる地域的な経済統合のための機関で当該機関のいずれの構成国も締約国となっていないものは、この条約に基づくすべての義務を負う。当該機関及びその一又は二以上の構成国がこの条約の締約国である場合には、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく義務の履行につきそれぞれの責任を決定する。この場合において、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく権利を同時に行使することができない。

地域的な経済統合のための機関は、この条約の規律する事項に関する当該機関の権限の範囲をこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書において宣言する。当該機関は、また、その権限の範囲の実質的な変更を寄託者に通報し、寄託者は、これを締約国に通報する。

第二十三条 効力発生

この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後にこれを批准し、受諾し若しくは承認し又はこれに加入する国又は地域的な経済統合のための機関については、当該国又は機関による批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

地域的な経済統合のための機関によって寄託される文書は、1及び2の規定の適用上、当該機関の構成国によって寄託されたものに追加して数えてはならない。

第二十四条 留保

この条約には、いかなる留保も付することができない。

第二十五条 脱退

締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この条約から脱退することができる。

1の脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日から一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力を生ずる。

この条約から脱退する締約国は、自国が締約国である議定書からも脱退したものとみなす。

第二十六条 正文

アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百九十二年五月九日にニュー・ヨークで作成した。

附属書I

オーストラリア

オーストリア

ベラルーシ(注)

ベルギー

ブルガリア(注)

カナダ

チェッコ・スロヴァキア(注)

デンマーク

欧州経済共同体

エストニア(注)

フィンランド

フランス

ドイツ

ギリシャ

ハンガリー(注)

アイスランド

アイルランド

イタリア

日本国

ラトヴィア(注)

リトアニア(注)

ルクセンブルグ

オランダ

ニュー・ジーランド

ノールウェー

ポーランド(注)

ポルトガル

ルーマニア(注)

ロシア連邦(注)

スペイン

スウェーデン

スイス

トルコ

ウクライナ(注)

グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国

アメリカ合衆国

注 市場経済への移行の過程にある国

附属書II

オーストラリア

オーストリア

ベルギー

カナダ

デンマーク

欧州経済共同体

フィンランド

フランス

ドイツ

ギリシャ

アイスランド

アイルランド

イタリア

日本国

ルクセンブルグ

オランダ

ニュー・ジーランド

ノールウェー

ポルトガル

スペイン

スウェーデン

スイス

トルコ

グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国

アメリカ合衆国