東文研セミナー ジェミル・アイドゥン教授講演 "Islamic Modernism and the Question of Eurocentric Global Intellectual History" が以下のとおり開催されました。
日時:6月1日(水)午後6時~午後7時30分
場所:東洋文化研究所3階 大会議室
報告者:ジェミル・アイドゥン Cemil Aydin(George Mason University)
司会者:森本一夫(東洋文化研究所 准教授)
報告要旨:
講演は、「ムスリム」の行動や性質が論じられる際に、彼らが本来持つはずの多様なアイデンティティや複雑な参照体系が捨象され、イスラーム教に従う人々であるという一点にのみ焦点が当てられてしまうという認識論上の「構え」、世界的な言説空間においていまだに顕著なこの問題点を指摘するところから始まった(アイドゥン教授は特に合衆国におけるアカデミア外の状況に危機感を抱いている)。もちろんそのような「構え」は、イスラーム教徒には国際的に是認された西洋起源の諸価値を共有することはできない、という主張と深く結びついたものである。
このような問題意識に基づいて論じられたのは、主に、(1)「人種的な範疇」としての「ムスリム」、および「ムスリム世界」という観念がグローバルな含意を持つ概念として立ち現れてきたのは1870-80年代のことであったこと、(2)その直前の時期に焦点を当ててみると、例えば、諸帝国並立の状況下にあったオスマン帝国の自己像が、他の諸帝国と自らを同列に捉え、自らを、多様な臣民に文明の恩恵を授ける一つの主体と見なすものであったことに現れているように、ムスリムが当時是認されていたグローバルな諸価値の有力な推進主体となっていた状況が浮かび上がってくること(同様のことは他の非西洋の主体にも認められる)、といった点であった。
大きな構想の論旨の明確な講演であったので、参加者の「食いつき」もよく、質疑にも熱が入った。このテーマを正面から扱うという著書の刊行が待たれるところである。なお、参加者は約25名。
(以下、当日の様子)