日時: 3月15日(木) 16時~17時半
場所: 東京大学東洋文化研究所 3階大会議室
題目: 文字世界としての文化世界・アラビア文字世界としてのイスラム世界・そしてオスマン帝国 ―比較史への我が道の一到達点―
発表者: 鈴木 董(東洋文化研究所・教授)
司会: 長沢 栄治(東洋文化研究所・教授)
報告:
1983年以来、西アジア研究部門(経済政治運営単位)の助教授、教授(1991年より)として、29年間にわたり東京大学東洋文化研究所につとめられた鈴木董先生が3月末をもって退職されるにあたり、最終発表会が行なわれた。
オスマン帝国研究を志す出発点として、本研究所の大先輩の泉靖一先生『インカ帝国』を中学生時代に読み、比較史への関心を抱いたことから始めて、大学生時代に飯塚浩二先生(西アジア経済政治運営単位の創設者)の著作に刺激を受けた点など、自身の研究生活を振り返るとともに研究所との縁を回顧した。
今後に予定している比較史の構想を述べるに当たり、「異文化圏」としてのイスラム世界を把握する場合の「文明」と「文化」概念の定義、「文字世界」(ラテン・キリル・アラビア・梵字・漢字)としての「文化」世界の把握の仕方などを詳しく解説し、また比較史の主要な研究対象である政治単位の硬い「殻」としての支配組織とその担い手(支配エリート)について、西洋の優越の時代のオスマン帝国の対応を事例に論じた。転じて、柔らかい政治単位の中身としての文化についても、食文化を中心に含蓄と奥行きのあるお話を展開し、聴衆を魅了した。最後に、オスマン帝国史研究のさらなる充実と、長年準備してきた中国・日本との比較史研究に向けての今後の研究生活の抱負を述べた。
会場は100名近い参加者で満員であった。