『目の眼』の2013年1月号から12月号まで、「旅苞語り」という連載を始めた。これは骨董好きの趣味人の雑誌への、コレクションの紹介を目的とするかのようにみられるであろうが、私としてはきわめて真面目な学術的意図に発する連載と考えている。もちろん楽しく人類学研究のフィールドの余白とその利用について、読者に読んでいただくことは当然だが、研究と旅、資料としての物と美しいものとしてのエスニック・アートや古民藝、美の普遍性や物からみた文化の記述や分析などの問題を、わかりやすく考えてみるというのが最大のテーマである。民藝とエスニック・アートの交叉点を考えることによって、人類学の物質文化研究あるいは新しいもの研究の展開に新しい側面からの照明を当ててみたいという野心もある。
松井 健・名和 克郎・野林 厚志 編『グローバリゼーションと〈生きる世界〉―生業/生産からの人類学的ヴィジョンの模索―』