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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定

[場所] ラングーン
[年月日] 1954年11月5日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),675−677頁.条約集,33−27.
[備考] 
[全文]

 日本国及びビルマ連邦は、

 千九百五十四年十一月五日にラングーンで署名された日本国とビルマ連邦との間の平和条約(以下「条約」という。)第五条1(a)の規定の実施に関する協定を締結することを希望し、

 よつて、このためそれぞれの代表者を任命した。これらの代表者は、次のとおり協定した。

第一条

1 日本国は、年平均二千万アメリカ合衆国ドルに等しい七十二億円の価値を有する日本人の役務及び日本国の生産物を、条約の効力発生の日から十年間、賠償としてビルマ連邦に供与するものとする。

2 日本国は、年平均五百万アメリカ合衆国ドルに等しい十八億円の価値に達する日本人の役務及び日本国の生産物を、条約の効力発生の日から十年間、日本人とビルマ連邦の政府又は国民との共同事業の形式で使用に供することにより行われる経済協力を容易にするため、あらゆる可能な措置を執るものとする。

3 1及び2にいう役務及び生産物は、この協定の附属書に掲げられ、かつ、原則として同意されたビルマ連邦の経済の回復及び発展並びに社会福祉の増進のため供与し、又は使用に供するものとする。供与され又は使用に供される役務及び生産物は、両政府の合意により決定されるものとする。

第二条

1 ビルマ連邦は、この協定の第一条の規定を円滑に実施するため必要な措置を執るものとする。

2 ビルマ連邦は、日本国がこの協定の第一条1にいう役務及び生産物を供与できるようにするため、利用することができる現地の労務、資材及び設備を提供するものとする。

3 ビルマ連邦は、ビルマ連邦の政府及び国民がこの協定の第一条2にいう経済協力が円滑に行われるように共同事業の資本のうちその当然負担すべき部分を提供することを約束する。

4 ビルマ連邦は、この協定に基いて供与され、又は使用に供される日本国の生産物が、両政府間で別段の合意をした場合を除くほか、ビルマ連邦の領域から再輸出されないようにすることを約束する。

第三条

1 この協定の第一条にいう共同事業におけるビルマ連邦の政府又は国民の持分又は所有株式の割合は、当事者間で別段の合意をした場合を除くほか、六十パーセントより少なくないものとする。

2 共同事業における日本人の持分又は所有株式は、個個の契約が結ばれる時にビルマ連邦政府がその日本人に対して収用しないことにつき保証を与えた期間中は収用されることはないものとする。

3 ビルマ連邦政府が共同事業における日本人の持分又は所有株式を前記の保証期間の経過後に収用しようとするときは、その収用は、前記の個個の契約が結ばれる時に同政府が定めなければならない条件に従つてのみ行われるものとする。

4 ビルマ連邦政府は、前記の収用に対する補償金、共同事業における日本人の持分又は所有株式の売却代金、その持分又は所有株式から生ずる利子及び配当金並びに日本人が共同事業から受け取る俸給その他の所得の日本国への送金を、個個の契約が結ばれる時に同政府が定めなければならない条件に従つて許可するものとする。

第四条

 両政府は、その代表者から構成されるべき合同委員会を設置するものとする。この合同委員会は、この協定の実施に関する事項についての協議及び両政府への勧告のための機関とする。

第五条

 この協定の実施に関する細目は、両政府の協議により合意されるものとする。

第六条

1 この協定の解釈及び実施に関する両国間の紛争は、まず、外交上の径路を通じて解決するものとする。両政府がこうして解決することができなかったときは、その紛争は、各政府が任命する各一人の仲裁委員とこうして選定された二人の仲裁委員が合意する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁裁判所に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両国のうちいずれかの国の国民であつてはならない。各政府は、いずれか一方の政府が他方の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日以内に一人の仲裁委員を任命しなければならない。第三の仲裁委員については、前記の期間の後の三十日の期間内に合意されなければならない。

2 両国は、前項の規定に基いて行われた決定に従うことを約束する。

第七条

 この協定は、それぞれの国により、その国内法上の手続に従つて承認されなければならない。この協定は、その承認を通知する公文が交換された日に効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、両国のそれぞれの政府から正当に委任を受けて、この協定に署名した。

 千九百五十四年十一月五日にラングーンで本書二通を作成した。

日本国のために

岡崎勝男(署名)

ビルマ連邦のために

チョウ・ニェン(署名)

   附属書

1  水力発電所の建設

2  製鉄所の建設

3  港湾施設の復旧

4  病院の建設及び医療の提供

5  ビルマ人の技術者及び学生の日本国における教育

6  ビルマ人の技術者のビルマにおける技術訓練

7  肥料工場の建設

8  鉄道の復旧

9  造船所の建設

10 爆薬及び砲弾の製造

11 セメント工場の建設

12 塩田の開発

13 砂糖工場の建設

14 化学工場の建設

15 河川運送施設の復旧

16 非鉄金属工場の建設

17 機械工場の建設

18 電気通信施設の復旧

19 両政府間で合意される他の生産物及び役務の提供